2008年5月29日木曜日

Bösendorfer

オーストリアに所在しヤマハの子会社であるピアノ製造会社エル・ベーゼンドルファー・クラヴィーアファブリーク(ドイツ語:L. Bösendorfer Klavierfabrik GmbH )

ベーゼンドルファー (L. Bösendorfer Klavierfabrik GmbH、エル・ベーゼンドルファー・クラヴィーアファブリーク・ゲーエムベーハー) は、オーストリアのピアノ製造会社及び同社製のピアノである。
世界的に知られ、スタインウェイ、ベヒシュタインと並んで、ピアノ製造御三家、世界三大ピアノの一つに数えられる。

スタインウェイ、ベヒシュタインと並んでピアノ製造御三家、世界三大ピアノの一つに数えられている名器ピアノ。国際ピアノ・コンクールでは最高峰のものと言えるフレデリック・ショパン国際ピアノ・コンクールの公式ピアノの一つでもあった(現在・2011年は公式ピアノから除外されている)。

1828年、オーストリア、ウィーンにてイグナーツ・ベーゼンドルファーにより創業された。爾来、各国の皇室や王室の御用達として選定されたり、産業博覧会で入賞したりするなど、名声を高めていく。

第二次世界大戦後の一時期、経営難に陥って経営がアメリカの企業体に移ったこともあったが、2002年、オーストリアの銀行グループであるBAWAG P.S.K.が経営権を取得して、名実ともにオーストリアに復帰した。しかし、2007年再び経営難に陥り、ヤマハへの売却が決定し、2008年にはヤマハの子会社となった。

作曲家にして超絶技巧のピアニストであったフランツ・リストの激しい演奏に耐え抜いたことで、多くのピアニストや作曲家の支持を得るようになり、数々の歴史あるピアノブランドが衰退していった中、ウィンナー・トーンを今に伝える名器として、そして至福のピアニッシモとして、その人気をスタインウェイと二分している。

ベーゼンドルファーを特に愛用したピアニストとしては、ヴィルヘルム・バックハウスが有名で、彼は旧西ドイツでのコンサート以外では、ベーゼンドルファーしか弾かなかったとも言われている。

ジャズ界においては、スタインウェイやヤマハのピアノが支配的であるが、ジャズピアニスト、オスカー・ピーターソンなどは『べーゼン弾き』としてよく知られている。

最近のピアニストではアンドラーシュ・シフが有名で、東京オペラシティに納入された「インペリアル」はシフの選定によるもの。その他、パウル・バドゥラ=スコダ、イェルク・デームス、そしてフリードリヒ・グルダもべーゼンを好んで用いた。

加えてスビャトスラフ・リヒテルもウィーンでの演奏会では必ずベーゼンドルファーを弾いたといい、何枚か録音もある。


製品      

グランドピアノ

長さ  間口  鍵盤数

Model 170   170 146 88
Model 185   185 146 88
Model 200   200 146 88
Model 214   214 146 88
Model 225   225 156 92
Model 280   280 156 88
Model 290   290 168 97

アップライトピアノ

Model 130CL  132 153 88


「インペリアル」とも呼ばれる最上位機種のフルコンサートグランドピアノ「モデル290」がベーゼンドルファーの代表機種で、標準の88鍵の下にさらに4〜9組の弦が張られ、最低音を通常よりも長6度低いハ音とした完全8オクターブ、97鍵の鍵盤(エクステンドベース)を持つピアノとして有名である。

これはフェルッチョ・ブゾーニがJ.S.バッハのオルガン曲を編曲したとき、低音部に標準のピアノでは出せない音があったため、ルードヴィッヒ・ベーゼンドルファーに相談したことが始まりと言われている。

エクステンドベースが追加されたことによって弦の響板が広がり、共鳴する弦も増えて中低音の響きが豊かになった。しかしそのため、しばしば一部のピアニストからは「中低音の響きは豊かだが、高音とのバランスを考えて弾かなければならず、弾きこなすのが難しいピアノだ」と言われる。

以前は、拡張域の鍵の部分に蓋を付けることで、一般の曲の演奏時に誤打を防いでいたが、現行品では白鍵も黒くすることで区別している。


音色は至福の音色と呼ばれる。ベーゼンドルファーは、1年以上の月日をかけて全工程を手作業で作られている。代表的なモデルでは井形に組まれた強固な支柱の上にスプルース材のブロックを積み上げてインナーリムを製作し、それに比較的薄いスプルースからなるアウターリムを張り合わせることで、ピアノ全体がスプルース材を介して豊かな中低音を響かせる設計となっている。

現在までにベーゼンドルファーが生産したピアノは48,000台ほどで、およそヤマハの100分の1、スタインウェイの10分の1である。


コンサーヴァトリーシリーズ

市場拡大のため、それまで経済的な理由で同社の標準モデルを導入できなかった大学などの教育機関向けにコンサーヴァトリーシリーズ(Conservatory Series)を設計した。生産の過程で「non-critical areas」と呼ばれる生産ラインに依存する時間を短縮することで生産コストを削り、標準モデルより安価に提供できるシステムを構築している。


製品 長さ 間口 鍵盤 種類

グランドピアノ

モデル170CS 170cm 151cm 88鍵
モデル185CS 185cm 151cm 88鍵
モデル200CS 200cm 151cm 88鍵
モデル214CS 214cm 151cm 88鍵


特別限定モデル

ベーゼンドルファーの創立170周年や175周年にフランツ・シューベルトやフレデリック・ショパンなどの有名な作曲家にちなんで名付けられ、設計された特別、限定モデルのピアノなどがある。

デザインモデル

ベーゼンドルファーは100年以上前から著名な建築家やデザイナーを起用した特別モデルを制作している。 1866年にウィーン楽友協会等の設計で知られる建築家のテフォイル・ハンセン(Theophil Hansen)、1909年にヨーゼフ・ホフマン、そのほかJosef Frank、フェルディナンド・アレクサンダー・ポルシェやアウディのデザインスタジオ等がベーゼンドルファーのピアノをデザインしている。

1990年に建築家のハンス・ホラインがデザインしたベーゼンドルファー・インペリアル・グランドピアノは世界に2つしかない。1つはアメリカ、フロリダ州オーランドのウェスタン・グランド・ボヘミアン・ホテルにあり、もう1つは中国の上海にある。1つ目のオーランドにあるピアノは1本の木の80%が使用され、それぞれの真鍮脚には一本あたり約160万円の価値があるとされ、2つあるホライン設計のピアノにはそれぞれ約3000万円の価値があるとされる。



日本国内では、過去に総代理店として日本ベーゼンドルファーが本社(静岡県磐田市)のほか東京都中野区、大阪市淀川区の三カ所にショールームを所有していた。本社ショールーム内に設けられているアンティークピアノのコレクションはベーゼンドルファーのみならずベートーヴェンの時代のジョン・ブロードウッドやショパンの時代のプレイエル、エラールなどの有名ブランドの他に、ピアニストのアルフレッド・コルトーが所有していたダブルグランドピアノやジラフピアノといった極めて珍しい形のピアノもコレクションされていた。

しかしウィーン本体側がヤマハに買収されたことにより2007年11月27日付で日本ベーゼンドルファー(株式会社浜松ピアノセンター)は倒産し、各地のコンサートホールの運営ならびに調律、修理などの事業は株式会社ビーテックジャパンに引き継がれ、ベーゼンドルファーの技術メンテナンス会社として製品を維持している。

ヤマハが株式会社ベーゼンドルファー・ジャパンを発足し、東京都中野区に本社ショールーム、静岡県浜松市にテクニカルサポートセンターを構え、東京、大阪に特約店を設置するなどした。

その後、2009年9月1日付けのベーゼンドルファー・ジャパン・グループ内のプレスリリースには、株式会社ベーゼンドルファージャパンはヤマハ株式会社へ事業譲渡されると発表されている。なお、2009年11月30日付のプレスリリースでは、テクニカルサポートセンターは、静岡県掛川市に移転されたことが発表された。

2000年代初頭にオーディオ機器(スピーカー)の開発・製造をしており、日本国内ではオーディオ関連商社である株式会社ノアの手で輸入されていたが、ヤマハ傘下になり撤退した。

現在、ベーゼンドルファースピーカーの設計者が、創業者イグナーツがかつて在籍しており、ヤマハとベーゼンドルファーの買収競争もしたオーストリアのピアノブランド、ブロードマンに移り、Brodmann Acousticsとして販売されている。


ベーゼンドルファーを使ったレコーディングの例

演奏者/タイトル

ゲルハルト・オピッツ/ブラームス : ソロ・ピアノ作品全集
フリードリヒ・グルダ/モーツァルト : ピアノ協奏曲第20番・21番
アンドラーシュ・シフ/シューマン:アラベスク・交響的練習曲
パウル・バドゥラ=スコダ/モーツァルト : ピアノ協奏曲第17番K453・第19番K459
ヴィルヘルム・バックハウス/最後の演奏会
ブラッドリー・ジョセフ
スヴャトスラフ・リヒテル/バッハ : 平均律クラヴィーア曲集全巻
大井和郎/リスト:パガニーニ・エチュード(完全盤)
大井和郎/リスト:超絶技巧練習曲 初版
梯剛之/プレイズ・モーツァルト
梯剛之/プレイズ・モーツァルト2
加古隆/PIANO
加古隆/KUMANO熊野古道~神々の道~
木住野佳子/シェスタ
藤井一興/フォーレ:夜想曲
藤原由紀乃/ベートーヴェン:ワルトシュタイン
藤原由紀乃/ショパン:エチュード全集
藤原由紀乃/シューマン:交響的練習曲
松本俊明/Pianoia1
松本俊明/Pianoia2
三柴理/Pianism
三柴理/Pianism II
桜庭統/スターオーシャン4 オリジナルサウンドトラック
レ・フレール/ピアノ・ブレーカー
吉田慶子(vo)・黒木千波留(piano)/samba cancao (サンバ・カンソン)
根岸弥生/弥生
トーリ・エイモス/アンダー・ザ・ピンク
トーリ・エイモス/ボーイズ・フォー・ペレイ~炎の女神
トーリ・エイモス/クワイヤーガール・ホテル
トーリ・エイモス/トゥ・ビーナス・アンド・バック
トーリ・エイモス/ストレンジ・リトル・ガールズ
トーリ・エイモス/テイルズ・オブ・ライブラリアン~トーリ・エイモス・コレクション
トーリ・エイモス/ビーキーパー
トーリ・エイモス/THE ORIGINAL BOOTLEGS
トーリ・エイモス/アメリカ人形軍団
Steely Dan / Katy Lied



2008年5月22日木曜日

C.Bechstein

ベヒシュタイン(または、ベッヒシュタイン、C.Bechstein)は、スタインウェイ、ベーゼンドルファーと並んで、世界三大ピアノメーカーに数えられるドイツのピアノ製造会社である。


1853年、カール・ベヒシュタインによってベルリンで創業。「ピアノのストラディバリウス」と呼ばれるほどの名器で、第2次世界大戦前は日本における最高のピアノの代名詞であった。ベヒシュタインについてフランツ・リストは「28年間貴社のピアノを弾き続けてきたが、ベヒシュタインはいつでも最高の楽器だった。」クロード・ドビュッシーは「ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ。」と言う言葉を残している。 また、セシル・テイラー、チック・コリアなどジャズピアニストにも度々使用され、クラシック界に留まらず、その演奏性は高く評価されている。

しかし、創業からの長い年月の中で、度重なる苦難の時代もあった。1929年、世界恐慌で打撃を受け、さらに第二次世界大戦で工場が破壊されるなど、1940年代半ばにいったん操業を停止した。また、第二次大戦中、ナチス・ドイツに協力したとして(ヒトラーはベヒシュタインを‘第三帝国のピアノ’としていた)戦後はドイツ民族のナチズムからの完全な脱却とともにその栄光の座から退いていくこととなった。1962年、アメリカのボールドウィン社の傘下に入ったものの、1986年にドイツのピアノ製造マイスターであるカール・シュルツェが経営権を買い取り、念願であったドイツ人の手に経営権が戻された。その後は資本増強を積極的に行い、1997年には株式会社へ(C. Bechstein AG)、資本増強と東西ドイツ統一と共に、ツィンマーマン(またはツィンメルマン、Zimmermann、1884年ライプツィヒで創業)、ホフマン(W. Hoffmann、1904年ベルリンで創業)のブランドを傘下に収め、ベヒシュタイングループを設立。現在に至っている。


ベヒシュタインピアノの特徴は、ひとつひとつの音が濁らない分離感、音の立ち上がりの早さにある。また音色に透明感があるので、演奏者のイメージがそのテクニックによって的確に表現できると言われている。「ピアノの音色はピアニスト自身が作り出すもの」という考えの下、ベヒシュタインピアノは完全なる中立音を目指した設計がなされている。構造的な特徴としては、ピアノの音は響板で作るというコンセプトを核として、高音部に総アグラフ式(全ての弦がアグラフと呼ばれる穴の開いたピンの中に弦を通す方式)を採用し、これによりフレーム(鉄骨)と弦を完全に分離することで金属的な雑味を無くし、立ち上がりの早いクリアな音色を実現している。こうした響き方は鉄のフレームを鳴らすというスタインウェイの豪奢なそれとは対照的である。アクションはレンナー社製を採用していたが、近年は複数の部品メーカーから各々に優れた部品を集め、ベヒシュタインブランドのアクションとしている。

近年、総アグラフ式をやめ、高音部をフレームに共鳴させ音量を確保するカポダストロバーを採用したが、今回その方式を採用したのは、あくまでも本来の音色の多様性と色彩感というコンセプトは変えずに、音に力強さを求める近年の多くのピアニストの要望と、大きなホールでのコンチェルトの演奏などにも対応できる音量を確保するためだといわれている。この変更により、コンチェルトでは高音部がオケの音にかき消されてしまうという弱点が改善された。しかし、高音部のパワーを引き出そうとすることで音の分離感をある程度犠牲にした結果となったため、往年のベヒシュタインファンの中には、この変更を嘆かわしく思っている人もいるだろう。しかし、響板やケースの張り込み方法などの変更はなく、ベヒシュタインのコンセプトである「表現力」「色彩感」「奥行き感」は現在も変わっていない。この設計変更により世界3大メーカーは3社すべてが高音部にカポダストロバーを採用したことになる。

2006年、第1回ベヒシュタイン国際ピアノコンクールがドイツで開催された。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』