2008年6月20日金曜日

Fazioli

ファツィオリ(Fazioli)は、イタリアのピアノメーカー、及びそのピアノをいう。ファツィオーリとも。

沿革
もともと家具メーカーであったが、ピアニストでもあった社長のパオロ・ファツィオリが世界最高のピアノづくりを目指して1978年に創設した。工場はイタリア北部のサチーレにある。音響学や木工技術などの専門家やアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリのピアノ調律師であったタローネの弟子らを招聘してゼロからピアノを考案したという。サプリメンタルブリッジを一体型でなく各音のキーに正しく合わせる独立アリコート方式を採用、豊麗な音の伸びと美しい高次倍音を可能にした。また、響板に、一般的に使用されるアラスカ製のものでなく、フィメンエ峡谷のレッドスプルースを使用している。1980年に最初のモデルが完成、創業20年あまりにして、ピアノの名器として、スタインウェイやベーゼンドルファーなどと並ぶ名声を確立している。職人による手作りにこだわり、生産はグランドピアノのみを年間70台程度という。

特徴
家具メーカーであったことが影響したのか、両端音域の音質が中音域とそれほど変わらない「全部の音域が均質な」珍しい性能のピアノである。これは19世紀にあった、全ての音域が違った音質を揃えた従来のピアノ製法とは、正反対の方角を向いている。そのため、低音域のうねり、中音域の艶、高音域の硬質感といった各音域の特徴を意識して作曲された曲を演奏すると、ファツィオリだけが特異な表情を見せる。一方で、後述するとおり、このファツィオリだけが持つ均質感に魅了されるピアニストも多い。

主な製品
世界最大のモデルF308は、奥行きの長さが308㎝(通常は275㎝前後)、独自の第4ペダル(物理的に鍵盤を下げることで沈む深さを浅くし、操作を軽快にする)を備える。高音から低音まで均質でクリア、ダイナミクスの大きさなど、現代ピアノに求められる性能を十分に発揮しながら、柔らかみのある木質感をたたえた音質が特徴。

需要状況
日本では、1988年にラザール・ベルマンが使用したのが初めてといわれる。アルド・チッコリーニがファツィオリを好んで弾いており、ショパンの夜想曲集などの録音がある。チッコリーニは、2003年10月のファツィオリ・フェスティバルでも来日してファツィオリを演奏し、話題を呼んだ。2004年には、アンジェラ・ヒューイットがファツィオリを弾いて録音したショパン夜想曲・即興曲集が発売された。マウリツィオ・ポリーニもファツィオリを購入したといわれる。現在のところ、日本では栗東芸術文化会館「さきら」(滋賀県栗東市; 日本で初めてファツィオリを購入したホール)、幕張ベイタウン・コア(千葉県千葉市)、北上市文化交流センター(岩手県北上市; 2005年10月にアルド・チッコリーニが再来日しファツィオリを演奏)が所有する以外は数名の個人購入者を数えるのみで「幻のピアノ」と呼ばれることも多い。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

0 件のコメント: