2008年6月20日金曜日

Steinway & Sons

スタインウェイ(または、スタンウェー、スタンウェイ、Steinway & Sons)は、ピアノ製造会社。ベヒシュタイン、ベーゼンドルファーと並んで、御三家の一つに数えられる。1853年、アメリカ合衆国・ニューヨークで設立され、今日では、ニューヨークと、ドイツ・ハンブルクに生産拠点を置く。スタインウェイのピアノは、世界で最も有名なピアノの代表格であり、俗に「神々の楽器」 (The Instrument of the Immortals) として知られているが、これは多くの伝説的なピアニストや作曲家達の信奉の結果でもある。



沿革
1836年に、ドイツ・ニーダーザクセン州のゼーセン (Seesen) で家具製作を営んでいたヘンリー・スタインウェイ(ハインリヒ・エンゲルハルト・シュタインヴェーク、Heinrich Engelhard Steinweg/Henry E. Steinway)が、スタインウェイの第一号となるピアノを製作した。ヘンリー・スタインウェイはその後、ドイツからアメリカ合衆国へ渡り、1853年にスタインウェイ・アンド・サンズをニューヨークに設立する。ヘンリー・スタインウェイの死後、1880年に、ハンブルクに生産拠点が開かれた。

ベーゼンドルファーなどのヨーロッパの名門メーカーは、ピアノをチェンバロの進化した延長として、音響的に残響豊かな宮廷で使用する前提でピアノ造りを行なっていた。それに対して、スタインウェイは、産業革命により豊かになったアメリカ市民が利用していた数千人を収用できる音響的に貧弱な多目的ホールにおいての使用を念頭においた独自のピアノ造りを追い求めた。そのために、今では常識となっている音響工学を設計に取り入れる手法を初めて取り入れた。その結果、スタインウェイはピアノとはいえ、基本的な構造そのものが従来のピアノとは根本的に異なるものとして造られるようになったのである。

ピアノの設計思想にはいくつかの流派がある。響板のみを響かせようとしたベヒシュタイン。胴の部分にも響板と同じ木材(単板)を用い、なおかつ薄く響きやすいようにしたベーゼンドルファー。スタインウェイはそれらに対して、厚く強固な胴でしっかりと響板からの圧を支える構造を持つ。また胴からの反射音も多彩な響きに貢献していると言われている。それ以外にも鋳鉄製単一フレームや交差弦方法など、スタインウェイによって広められた革新の数々は、世界的に広く他のピアノ製造者への手本となった。こうしたことから、現代のピアノはスタインウェイによって完成されたと言える。

しかしながら、20世紀後半以降、スタインウェイの経営は順風満帆とは行かず、1972年のCBSによる買収、その後の複数の個人投資家への売却を経て、1995年にセルマーの傘下に入った。今日では、セルマー及びその傘下に収まった旧UMIグループらと共に「スタインウェイ・ミュージカル・インスツルメンツ」(旧・セルマーインダストリーズ)を核とする楽器製造企業複合体を形成するに至っている。

この企業複合体は、1990年代後半にかけてアメリカ経済のバブルの恩恵を受けて、売上高を急激に増やし、楽器業としては最も高い売上を確保するようになり、財務体質が改善された。その結果、多くのピアノ製造メーカーが経営難に直面し、良い素材の確保が困難になる中で、スタインウェイはピアノ造りに欠かせない良質な素材を確保する点で決定的な優位性を保持する事となった。スタインウェイの品質の優位性については、このように財務面でのヨーロッパに対する優越性が無視できない要素となっている。

またこれ以外に、戦後の世界的な高級ピアノ市場の占有率をスタインウェイが独占できたのは、ヨーロッパ、特に敗戦国であるドイツの名門メーカーが第二次大戦の戦災により壊滅的なダメージを受け、主要な工房や多くの技術者を失った現実によるものでもある。

音色
スタインウェイ・ピアノの特徴はその透明感溢れる音色にある。そのため、クラシック、ジャズだけでなく、ジャンルを問わず対応することができる。とりわけ、マイクなどを通した電気信号変換の結果について違和感が少ないために、レコーディングや放送局では、ほぼスタインウェイのみが使用される。スタインウェイピアノは、その生産工場がアメリカ・ニューヨークとドイツ・ハンブルクの2箇所が存在し、それぞれで音色が若干異なる。

ニューヨーク・スタインウェイは、音色の好みを所有者自ら自在に調整できるように、出荷段階では柔らかめの音色になっている。しかし、ピアノ調律師との連携によりきらめくような独特の音色を生み出す事も可能である。ハンブルク・スタインウェイは、ニューヨークのものより初めから中庸にまとめられて出荷されており、弾き込む事により円熟した音色へと育つ。

スタインウェイはドイツ・ハンブルク製を輸出に適したモデルとしており、日本を始め世界各国で利用されるスタインウェイは殆どがドイツ製である。ちなみにアメリカ・ニューヨーク製については、基本的にアメリカのみへの出荷となっている。日本でニューヨーク・スタインウェイを購入するには、中古品を探すか特注扱いで取り寄せるしかない。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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